蟹は
――その話はいまさらしないでも
ただ猿を仕止めた
なぜと云えばお
いや、話していないどころか、あたかも蟹は穴の中に、臼は台所の
卵は
しかしそれは
彼等は
しかも
お
が、これは事実である。
が、猿は
しかし蟹は猿との
よしまたそれは
最後に青柿を投げつけられたと云うのも、猿に悪意があったかどうか、その
だから蟹の弁護に立った、雄弁の名の高い某弁護士も、裁判官の同情を乞うよりほかに、策の出づるところを知らなかったらしい。
その弁護士は気の毒そうに、蟹の泡を拭ってやりながら、
「あきらめ給え」と云ったそうである。もっともこの「あきらめ給え」
は、死刑の宣告を下されたことをあきらめ給えと云ったのだか、弁護士に
それは誰にも決定出来ない。
その上新聞雑誌の
蟹の猿を殺したのは
しかもその私憤たるや、
優勝劣敗の世の中にこう云う私憤を
――と云う非難が多かったらしい。
現に商業会議所会頭某
そのせいか蟹の
かつまた蟹の仇打ちはいわゆる識者の
大学教授某博
それから社会主義の某首領は蟹は柿とか握り飯とか云う私有財産を
臼や蜂や卵なども反動的思想を持っていたのであろう、事によると
それから
仏慈悲を知っていさえすれば、猿の所業を憎む代りに、
ああ、思えば一度でも
それから――また各方面にいろいろ批評する名士はあったが、いずれも蟹の仇打ちには
そう云う中にたった一人、蟹のために気を吐いたのは
代議士は蟹の仇打ちは武士道の精神と一致すると云った。
しかしこんな時代遅れの議論は誰の耳にも
のみならず新聞のゴシップによると、その代議士は数年以前、動物園を見物中、猿に
お
しかし蟹の死は当然である。
それを気の毒に思いなどするのは、婦女童幼のセンティメンタリズムに過ぎない。
天下は蟹の死を
死刑執行人、
天国は彼等の話によると、封建時代の城に似たデパアトメント・ストアらしい。
ついでに蟹の死んだ
蟹の妻は
なった動機は貧困のためか、彼女自身の性情のためか、どちらか
蟹の長男は父の没後、新聞雑誌の用語を使うと、「
今は何でもある株屋の番頭か何かしていると云う。
この蟹はある時自分の穴へ、同類の肉を食うために、
クロポトキンが
次男の蟹は小説家になった。
ただ父蟹の一生を例に、善は悪の
三男の蟹は
それが
握り飯は彼の好物だった。
彼は大きい
すると高い柿の木の
とにかく猿と戦ったが最後、蟹は必ず天下のために殺されることだけは事実である。
語を天下の読者に寄す。君たちもたいてい蟹なんですよ。